お酒を愉しむためのグルメマガジン CavaTappi［カバタッピ］[vol.93（2023秋号）]

公開日：2023.08.17

日本で多くの愛好家を持つワイルドターキー。
何を、どんな手法で、どこで行うか。それはバーボンウイスキー造りにおいて、どれも欠かすことのできない重要な要素である。その歴史を紡いできたウイスキー造りを探るべく現地に行きその魅力を探ってみた。

バーボンウイスキーの聖地、
ケンタッキーへ

2023年6月初旬にバーボンウイスキーの生産地ケンタッキー州に降り立った。壮大な牧草地を横目に空港から車で40分移動しワイルドターキー蒸溜所へ向かった。ここは1869年創業のアメリカで歴史のある作り手の一つ。ラベルには七面鳥が描かれ日本では「ケンタッキーを代表するバーボンウイスキー」として人気を博している。

七面鳥がアイコニックな
蒸溜所

ワイルドターキーは、トーマス・リピー氏が創業したリピー蒸溜所が起源。1893年シカゴで開催されたワールド・フェアで「ケンタッキーを代表するバーボンウイスキー」に選ばれるなど国内での評価を高めるようになった。そこから何度かオーナー変更を経て今は世界的なスピリッツメーカー・カンパリ社となり今も変わらず高品質なウイスキーを世界中に送り出している。
原料には、トウモロコシ、ライ麦、小麦の3種を使用している。それぞれが蒸溜所横に聳え立つタンクに貯蔵されている。マッシュビルは2タイプあり、ライ麦の比率を高めにスパイシーな原酒とバランスが取れたスタンダードスタイルの造り分けを行っている。

品質を支える
変わらない伝統と技術改革

ウイスキーには蒸溜前に発酵という工程を踏む。原酒の香りや酒質に大きく影響する為、蒸溜所では自家製の酵母菌を1940年より、今もなお使い続けている。ワイルドターキーの伝統を守る為、どんなに時が流れてもこの製造方法は変わることはないだろう。
　不変の伝統とは反対に生産効率は高くなっている。3,000ガロンの容量が入る発酵槽が23基あり常にウイスキー造りをできるキャパシティを持つ。蒸溜所内も全てオートフォーメーション化されており大規模な蒸溜所ながら8名のスタッフで全ての生産を行っている。

蒸溜へのこだわり

蒸溜における一番の特徴はバーボンの中でも低アルコールで蒸溜をすることである。通常バーボンウイスキーは連続式蒸溜機で70％近いアルコール度数まで蒸溜することが多いが、ワイルドターキーでは、ビアスチルとダブラーを使い60～65％のアルコール度数のニュースピリッツを得ている。アルコール度数が高くなることで原料由来のフレーバーが残りにくくなる欠点を除く為、一定の度数まで落として蒸溜を行うようにしている。

ワイルドターキーの
真骨頂「熟成」

樽の内側に最も強く焦がすレベルNo. 4の「アリゲーターチャー」が施されたアメリカン・ホワイト・オークを熟成に使用。低いアルコール度数で樽詰めを行うことで、熟成後の加水量を低く抑えることができるため、バーボン特有の風味を最大限に引き出している。こうした熟成樽へのこだわりが、ワイルドターキー独特の深い琥珀色とコクのある味わいを生み出すのである。